東海の中学校部活動はどう変わる?愛知・岐阜・三重の「地域展開」の現在地
発行者:増田裕一 / 東海ストーリーズ
この記事は、国や自治体などが公開している資料をもとにしたまとめです。取材記事ではありません。数字や出来事は、各資料に書かれている範囲で紹介しています。資料の情報は、各資料に記載された時点のものです。誤りに気づかれた場合は、お問い合わせからご連絡ください。
東海3県で、中学校の部活動が少しずつ「学校の外」へ移りはじめています。
国はこの動きを「地域展開」と呼び、学校の部活動を地域のクラブ活動へ移していく改革を進めています。休日の練習を担うのは先生ではなく、地域の指導者やクラブになる。そんな変化です。
この記事では、愛知・岐阜・三重の公開資料をもとに、いまどこまで進んでいるのかを整理します。まだ取材はできていないので、ここに書くのは公開されている情報と、それを読んだ僕の解釈だけです。両者は分けて書きます。
国の方針:3年間の「推進期間」から、次の6年間へ
国は令和5年度から令和7年度の3年間を「改革推進期間」とし、まず休日の部活動から地域へ移す環境づくりを進めてきました。
令和8年度からは、令和13年度までの6年間が新たな「改革実行期間」です。前期が令和8〜10年度、後期が令和11〜13年度で、前期が終わるころに国が中間評価を行い、後期の取組に反映するとされています(三重県の方針資料による)。
「試してみる時期」から「実際に進める時期」へ入った、ということになります。
なぜ動いているのか:子どもの数が減っている
背景の一つは、子どもの数の減少です。各県・市町の資料から数字を拾います。
- 三重県:中学校の運動部は平成28年の1,694から令和7年の1,490に減少。中学卒業者数は、令和7年3月の15,718人から令和16年3月には12,420人に減る見込み
- 愛知県愛西市:生徒数が平成24年度の2,141人から令和6年度の1,520人へ、約29%減少
- 愛知県飛島村:数年後に1学年1クラスになると予想
東海市の資料も、少子化によって、これまでのように多くの種目の部活動を運営することが難しくなっていると説明しています。学校の中だけで部活動を支える形に限界が見えてきた、というのが各資料に共通する背景です。
岐阜県:数字で見ると、かなり進んでいる
岐阜県のガイドラインには、具体的な数字が載っています。
- 令和7年11月時点で、休日部活動を行う1,509部のうち、1,386部が地域展開済み(91.9%)
- 地域クラブの指導者育成研修の受講者は、令和7年度末時点で2,245人
- 県の「地域クラブ指導者人材バンク」の登録者は、同じく1,155人
一方で、成果と並んで課題も書かれています。地域クラブの持続性と安全・安心の確保には、運営団体の事務局の設置や、市町村による認定制度の導入がなお必要とされています。運営費の公費と受益者負担のバランス、学校施設の使い方など学校との連携も、これからの課題です。令和6年度の実証事業の報告でも、移行先として「保護者クラブ(任意団体)」を考える部活動が多く、運営団体の体制づくりが課題とされていました。
これからの方針では、前期(令和8〜10年度)の重点を「運営団体の基盤強化」と「認定地域クラブ制度の導入に向けた環境整備」に置いています。
費用についても目安が示されています。会費は活動の維持に必要な範囲でできるだけ低くし、週1日・月4日程度の活動で月額1,000〜3,000円が目安です。市町村には、施設使用料を下げることや、送迎への配慮、経済的に困っている家庭の参加費支援が求められています。
三重県:市町ごとに事情が違う
三重県の資料では、令和7年度時点で、休日の地域展開が進んでいる割合は運動部で約58%、文化部で約24%です。ほとんどの市町で協議会は設置されたものの、市町ごとに進み具合には差があるとされています。
参考までに、部活動への加入率は、中学校で運動部が約64%、文化部が約18%(合わせて約82%)です。高校では運動部が約39%、文化部が約24%(合わせて約63%)となっています。
県は、中学校の数や指導者、活動場所、移動手段が市町ごとに違うため、全県で画一的に進めるのは難しいと考えています。そのうえで、改革実行期間のうちに、休日は原則としてすべての学校部活動で地域展開を目指す方針です。平日は、国が実現しやすい形を検証するまで、市町が地域の実情に合わせて進めます。
県の取組としては、指導者の人材バンク、部活動改革コーディネーターによる支援、県独自の補助事業があります。市町が地域クラブを認定する制度も整えていて、モデルの認定要件は8項目、有効期間は最長3年です。令和8年7月には、新しい「部活動ガイドラインおよび地域クラブ活動の推進等に関する方針」が公表されました。
愛知県:同じ県内でも、担い手がまちまち
愛知県が公開している報告書のうち、津島市・愛西市・弥富市・あま市・大治町・蟹江町・飛島村の7市町分を読むと、地域展開を実施・試行している市町は、運動部で4市町(愛西市、大治町、蟹江町、飛島村)、文化部で2市町でした。
取組の中身は、市町によってかなり違います。
- 飛島村:休日の部活動を民間事業者(リーフラス株式会社)へ完全に委託。保護者・生徒のアンケートでは、約9割から一定の評価
- 大治町:総合型地域スポーツクラブ「スポーツプラスおおはる」に委託して、月1回程度の地域クラブを実証(参加費500円/回)。月4回への移行を予定
- 弥富市:NPO法人「やとみ放課後アカデミー」を運営母体として準備中
- 蟹江町:剣道クラブを実証事業として運営し、令和9年9月からの休日地域クラブの本格始動を決定
移行の入り口として、部活動指導員を学校に配置する市もあります。
- 愛西市:令和7年度に部活動指導員を12名配置(12月1日時点)。休日は現在と同じ種目・場所・時間で実施しながら、教員の休日指導をなくすことを目指す
- あま市:市内2つの中学校の柔道部で、モデル事業として部活動指導員を配置。令和10年度からの全部活動の地域展開を目指す
- 津島市:コーディネーターを置き、令和8年度から休日の部活動のうち2部活動で指導者を配置することを目標に準備中
成果も報告されています。愛西市の文化部(吹奏楽・オーケストラ)では、地域クラブとの連携によって顧問の指導負担が大きく減り、練習内容の専門性や効率も上がったとされています。
別の市の例では、東海市が令和7年9月から休日の部活動を行わない方針を示しています。
受け皿の一つ、総合型地域スポーツクラブ
受け皿の一つとして名前が挙がるのが、総合型地域スポーツクラブです。スポーツ庁の調査では、令和6年7月1日時点で全国に3,581クラブ、設置されている市区町村は全体の79.8%でした。大治町の例のように、地域クラブの運営を担う事例も出ています。
3県を並べて見えた、共通の課題
3県の資料に共通して出てくる課題は、大きく3つです。
- 指導者:三重県は「指導者や受入団体の不足」を課題に挙げ、愛知の津島市・蟹江町なども指導者の確保を課題としています。愛西市は質・量・待遇の確保を課題としています
- 費用:岐阜県は公費と受益者負担のバランスを検討課題とし、愛知の弥富市も必要経費と受益者負担のバランスを課題としています。愛西市は、送迎や費用負担の増加を懸念しています
- 運営団体:岐阜県は運営団体の基盤強化を重点に置き、愛知のあま市は運営団体が未定で、仕組みの方針もまだ明確でないとしています
読んで僕が気になったこと(ここからは解釈です)
資料を並べて読むうちに、見方が少し変わったところがあります。
最初は、岐阜県の91.9%という数字を見て「岐阜がいちばん進んでいる」と思いました。ただ、三重県の約58%(運動部)や約24%(文化部)とは、数え方も時点も違う可能性があります。同じ土俵で比べられる数字ではないので、「どちらが進んでいるか」は、この資料だけでは言えないと考えるようになりました。
もう一つ気になったのは、「地域展開済み」の中身です。数字が進んでいても、受け皿が運営の基盤の弱い団体だと、続けられるかどうかが次の問題になりそうです。岐阜県が前期に運営団体の基盤強化を重点に置き、三重県が認定制度を整えているのは、同じ見立てからではないか、と僕は読みました。
費用も、気になる点です。月1,000〜3,000円という目安や、大治町の1回500円という実証の数字を見ると、家庭の負担がどう変わるのかが気になります。ただ、両県とも公費と受益者負担の線引きは、これから検討するとしています。
先生の側に立って読むと、また別の景色になります。愛西市は「教員の休日指導をなくす」ことを目標に挙げ、文化部では「顧問の負担が大きく減った」ことを成果として報告していました。改革の目的には、子どもの活動の場を守ることと、先生の負担を減らすことの両方があるようです。この二つが同じ方向を向く場面ばかりではないはずで、どちらを優先するかは、市町ごとの判断になっていくのだろうと感じます。
これは公開資料から考えた僕の見方で、現場の方の実感とは違うかもしれません。資料からは、先生や保護者、子どもたちがどう感じているかは見えないからです。
この記事のあとに
東海ストーリーズでは今後、地域クラブの運営や指導に関わる方に直接お話を伺いたいと考えています。ご本人からでも、推薦でも構いません。