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福祉 / 公開情報まとめ

東海の福祉は、畑ともつながっている|農福連携の4つの現場

この記事は、東海農政局などが公開している資料をもとにしたまとめです。取材記事ではありません。数字や出来事は、各資料に書かれている範囲で紹介しています。実際にお会いして、お話を伺った記録は、これから少しずつ残していきます。

福祉の現場と、農業の現場。別々の世界のように見えて、東海のあちこちで、この二つがつながり始めています。「農福連携」と呼ばれる取り組みです。

農林水産省は、農福連携を、障害のある人が農業の分野で活躍することを通じて、農業経営の発展と、本人の自信や生きがい、社会参画の実現を目指す取り組みだと説明しています。農業の側から見れば、担い手不足や高齢化が進むなかで、新しい働き手につながる可能性があります。福祉の側から見れば、働く場所と、役割を持てる機会が増えます。

ただ、その形は地域によってさまざまです。愛知・岐阜・三重から、4つの現場を見ていきます。

製造業の現場で気づいたことから:社会福祉法人 朋友(三重県鈴鹿市)

所在地:三重県鈴鹿市 / 運営:就労継続支援B型事業所「わか菜の杜」「Cotti菜」ほか

始まりは、平成18年にさかのぼります。自動車部品をつくる事業所で障害のある人を雇ううちに、「障害のある人にも、就きたい仕事がある」ことを知ったと、資料にあります。

農業と飲食の分野で活躍できる場をつくろうと、勉強会を重ねて、農業に手応えを得ました。平成22年のリーマンショックで製造業が停滞したことも重なり、農業の分野に進みます。平成25年には、三重県の公募に申請して、ステップアップカフェ「Cotti菜」を開設。平成27年には弁当づくりを始め、令和4年には新店舗で、弁当・パン・総菜の製造販売とイートインを行っています。

農場では、ハウスの水耕栽培を中心に、リーフレタスや水菜、小松菜などの葉物野菜を育てています。露地の農地は、平成30年の97アールから令和3年には153アールに広がりました。パンづくりは、働く人本人の希望を受けて始まったものです。好きな作業や得意な作業を選べる体制にして、作業の効率と収入を高めていく組織づくりを目指していると書かれています。

令和3年度の平均工賃は、「わか菜の杜」と「Cotti菜」を合わせて53,007円。資料には、令和2年の全国平均15,776円を大きく上回ると記載されています。令和2年12月には、障害のある人が生産に関わった食品などが対象の認証「ノウフクJAS」を取得しました。店内には県内の農福連携商品の売り場を設け、隣接する放課後等デイサービスの子どもたちの職場見学や就労体験も受け入れています。

編集メモ

働く人が「選べる」ことと、地域の子どもたちに「働く姿を見せる」こと。この二つが、現場の考え方の中心にあるように読み取れます。

「誰ひとり取り残さない居場所」を畑から:株式会社ココトモファーム(愛知県犬山市)

所在地:愛知県犬山市 / 農福連携の開始:令和元年

「誰ひとり取り残さない居場所をつくりたい」。その思いから、令和元年に農福連携が始まったと資料にあります。

荒れてしまった農地を活用し、れんげ農法による特別栽培米をつくっています。米は育てて終わりではなく、米粉を使ったバウムクーヘンなどのスイーツに加工して販売し、カフェの経営、祭りの開催や参加、見学会、農業体験まで広げています。米の付加価値を高めながら、稲作の文化と地域の景観を守る、という考え方です。

聴覚に障害のある人が中心になって運営する「サイニングストア」では、手話で接客を行っています。JAや行政、大学、地元企業とも連携しながら、商品づくりを進めています。

資料には、農作業に関わる障害のある人などの数が、令和2年の4人から、令和6年には89人に増えたと記載されています。農地は8.2ヘクタールから11.8ヘクタールへ。「ココトモフェスティバル2025」には、約3,000人が訪れたそうです。ノウフク・アワードでは、2022年にフレッシュ賞、2024年に準グランプリ、2025年にグランプリを受賞しています。

編集メモ

畑、加工、お店、お祭り。「働く場」にとどまらず、地域の人が集まる「居場所」へと広がっているところが印象的です。

売れなかった野菜を、自然栽培で立て直す:社会福祉法人 無門福祉会(愛知県豊田市)

所在地:愛知県豊田市 / 開所:1988年

無門福祉会は、1988年の開所から農作業に取り組んできました。ただ、開所当初は野菜がなかなか売れず、職員も利用者も、作業への意欲が上がらなかったそうです。農業部門の廃止を考えるところまで追い込まれたと、資料に書かれています。

転機は、2014年。休耕地や荒廃農地を借りて、障害のある人と一緒に、付加価値の高い自然栽培に切り替えました。いまは約7ヘクタールの農地で、米、オクラ、ニンジン、ハクサイなど約30品目を、無農薬・無肥料で育てています。養鶏農家で約300羽の世話をし、菌床しいたけは年間15,000菌床を栽培。生産から出荷の準備、加工、販売までを、福祉の事業者が一貫して行っています。

作業を細かく分けられるので、一人ひとりに合った仕事を用意できる。それが働きがいにつながった、と資料にあります。農業の技術が評価され、2014年からは、市内の農業法人の農作業も請け負うようになりました。イチゴ用のポットに土を詰める作業は、1日100ポットから1,000ポットへと、10倍になったそうです。

地元の小学校の総合学習で自然栽培の米づくりを行ったり、地元企業の社員ボランティアが田んぼの再生を手伝ったり。休耕地を広げるなかで協力者が増え、高齢者や、新しく農業を目指す若者の雇用にもつながったと記載されています。この取り組みは、東海農政局の「ディスカバー農山漁村の宝」の優良事例に選ばれました。

編集メモ

うまくいかなかった時期があったことを、資料がそのまま書いているところに、現場の誠実さを感じます。

地域の特産を、福祉の手で守る:株式会社DAI(岐阜県関市)

所在地:岐阜県関市 / 運営:就労継続支援A型・B型事業所「それいゆ」

DAIの歩みは、平成23年に愛知県犬山市で始まりました。イチゴの水耕栽培やしいたけの菌床栽培からのスタートです。平成26年に岐阜県関市に事業所を開き、「地域の景観を守る」「地域の特産品を創生する」「地域の特産品を守る」を目標に掲げました。

平成28年には、JAや県の農林事務所、里芋の生産者組合と連携して、岐阜県の特産「円空さといも」の毛羽取り作業を請け負い始めます。同じ年にA型事業所を、翌年にはB型事業所を開設しました。自社でも約1ヘクタールの農地で、さといもやニンニク、サツマイモなどを育てています。ニンニクは黒にんにくに、サツマイモは干し芋や焼き芋に加工して販売し、関市のふるさと納税の返礼品にも採用されました。

成果として、資料には次のように書かれています。生産者組合の組合員1戸あたりの栽培面積が、15アールから20アールに増えました。農産物全体の売上は、平成27年の337万円から令和3年の861万円に。令和4年の時点で、7件の農家からの依頼に応えています。農作業に従事する人のなかには、月10万円以上の賃金を受け取る人もいるそうです。

今後の目標として、DAIは「地福連携」を挙げています。農福連携から始めて、企業、農家、JA、行政と手を取り合い、仕事をつくることで、地域の暮らしと経済を支えていく考え方です。

編集メモ

福祉が、農家の手が足りない作業を引き受けることで、特産品そのものを守る側に回っている。そんな関係が見えてきます。

4つの現場に共通すること

ここからは、資料を読んで編集側が感じたことです。現場の方がどう感じているかは、お会いして伺わないと分かりません。

一つめは、仕事を細かく分けて、一人ひとりが「選べる」「合う」形にしていること。朋友は好きな作業や得意な作業を選べる体制を、無門福祉会は作業を細かく分ける工夫を、それぞれ挙げています。

二つめは、休耕地や荒廃農地を生かしていること。ココトモファーム、無門福祉会、DAIは、誰も耕さなくなった農地に手を入れています。農地を守ることが、そのまま地域の景観を守ることにつながっています。

三つめは、農家、JA、行政、学校、企業と、地域の人とつながっていること。福祉の中だけで完結せず、まわりを巻き込みながら広がっています。

そして、育てて終わりではなく、加工や販売、お店や体験まで広げていること。仕事の幅が広がるほど、働く人が選べる役割も増えていきます。

このあと、お話を伺いたい人たち

東海ストーリーズは、「ちゃんと話を聞いて、その人自身の言葉で記録を残す」ことを大切にしているサイトです。今回は公開資料をもとにしたまとめですが、いずれは、こうした現場の方々にお会いして、言葉を直接記録していきたいと考えています。

資料の情報は、各資料に記載された時点のものです。最新の状況は、各団体の公式の発信をご確認ください。掲載内容に誤りがあった場合や、修正のご希望がある場合は、お問い合わせからご連絡ください。速やかに対応します。

出典

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