東海ストーリーズ
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愛知・岐阜・三重の、人と地域の記録
ものづくり / 公開情報まとめ

東海のものづくりは、土と布と鉄で語れる|常滑・萬古・多治見・大垣の4つの現場

この記事は、経済産業省・中小企業庁、愛知県、三重県、岐阜県、各社の公式サイトなどが公開している資料をもとにしたまとめです。取材記事ではありません。数字や出来事は、各資料に書かれている範囲で紹介しています。実際にお会いして、お話を伺った記録は、これから少しずつ残していきます。

愛知・岐阜・三重は、日本のものづくりを語るうえで欠かせない地域です。やきもの、繊維、機械、部品。千年近く前から続く産地もあれば、百年以上かけて育った工場もあります。

ただ、「ものづくりの東海」と一言で言っても、現場の顔はさまざまです。この記事では、公開されている資料から、焼き物の産地を三つ、染色の工場を一つ、順番に見ていきます。

まず、数字で見る東海のものづくり

中小企業庁は毎年、全国の中小企業・小規模事業者のなかから、優れた取り組みをしている会社を「はばたく中小企業・小規模事業者300社」として選んでいます。

2023年度の選定では、愛知県から28社、岐阜県から9社、三重県から2社が選ばれました。2025年度の選定(2026年5月28日発表)では、愛知県27社、岐阜県7社、三重県5社です。

選ばれた会社の業種は、めっき、鋳造、製罐、樹脂、塗装、電機、醸造、製菓、毛糸、タクシーまで幅広く、一つの県のなかにも、いくつもの「ものづくり」があることが分かります。なお、公開されている一覧には会社名と部門が中心に書かれており、一社ずつの詳しい取り組みまでは載っていないものも多くあります。そこで以下では、詳しい資料が確認できた現場を取り上げます。

平安の終わりから続く赤い土:常滑焼(愛知県常滑市)

産地:愛知県常滑市ほか / 伝統的工芸品に指定:昭和51年(1976年)6月2日(第5次指定)

愛知県の公開ページによると、常滑焼は、日本六古窯の一つに数えられ、その起源は平安時代の終わりまでさかのぼります。

古くは、大きな瓶や壺といった日用の道具で知られていました。桃山時代には茶道具がつくられ、江戸時代になると、この地域の土に鉄分が多いことを生かして、朱泥焼、白泥焼、火色焼が生まれ、今日の常滑焼の基礎が築かれました。

代表的なのは「朱泥」です。粘土に含まれる鉄分を、赤く発色させてつくります。成形はろくろ、押型、手ひねりのいずれかで行い、飾りをつけ、釉薬をかけ、焼き上げます。釉薬をかけない製品の場合は、常滑焼ならではの素地磨きを行い、焼いたあとに羽毛で磨いて艶を出して仕上げる、と書かれています。急須や、つぼ焼いも用の甕などが、製品の例として紹介されています。

編集メモ

羽毛で磨く、という工程が印象に残りました。千年近い歴史のある産地が、いまも手の仕事で成り立っていることが、一行の説明からも伝わってきます。

名前に刻まれた願い:四日市萬古焼(三重県四日市市)

産地:三重県四日市市とその周辺 / 伝統的工芸品に指定:昭和54年(1979年)

中部経済産業局の資料によると、萬古焼を始めたのは沼波弄山(ぬなみ ろうざん)という人物です。作品に「萬古不易」、つまり「いつまでも変わらない」という意味の言葉を刻んだことから、萬古焼と呼ばれるようになりました。創始から270年以上、先人が培った技術が受け継がれていると書かれています。

特徴として挙げられているのは、鉄分を多く含む紫泥(しでい)でつくる、茶褐色の急須です。そして現在は、土鍋を中心とした耐熱陶器の大きな産地として、全国に製品を出荷しています。伝統を守りつつ、新しい製品の開発にも力を入れている、とも書かれています。

商標の資料には、権利者として、萬古陶磁器振興協同組合連合会、萬古陶磁器工業協同組合、萬古陶磁器卸商業協同組合の三つの団体が並んでいます。つくる人、売る人、まとめる人。産地が団体として、名前を守っている様子がうかがえます。

編集メモ

「萬古不易」。変わらないことを願った言葉が、変わり続けて土鍋の産地になった今も、ブランドの名前として残っている。そのことが面白いと感じました。

タイルの卸から、やきものアクセサリーへ:鈴研陶業(岐阜県多治見市)

所在地:岐阜県多治見市 / 創業:昭和24年(1949年)

美濃焼の産地として知られる、岐阜県多治見市。ここで昭和24年に「七窯社」の屋号で創業したのが、有限会社鈴研陶業です。公開されている事業計画の概要によると、最初はタイルの卸売から始まりました。

その後、海外製品の流入や、大手メーカーによる寡占化によって、取り扱う量が減っていきます。そこで、小型のプレス機を生かして小さなタイルに特化し、さらにタイル以外の製品、つまりアクセサリー類へと広げていきました。これが「やきものアクセサリー」の製造・販売事業です。この事業は、美濃焼を「地域産業資源」として活用するものとして、平成29年(2017年)2月3日に認定を受けています。

産地の名前が世界に知られていても、一社一社の商売は、時代の変化に合わせて形を変え続けなければなりません。小さな会社が、持っている設備で何ができるかを考え直した例として、この資料は読めます。

編集メモ

大きく何かを変えたというより、持っている機械の「得意」を見つめ直して、売り先を変えていった。そんな静かな転換だったのではないか、と資料から想像しています。実際はどうだったのか、いつかお伺いしたいです。

明治22年から続く染色の工場が、環境に挑む:株式会社艶金(岐阜県大垣市)

所在地:岐阜県大垣市 / 創業:1889年(明治22年) / 2023年度「はばたく中小企業・小規模事業者300社」DX部門に選定

岐阜県大垣市の艶金は、化合繊、天然繊維、複合繊維のニットの染色整理を専門とする会社です。紳士服、婦人服、子ども服の高級品からスポーツカジュアルまで、幅広い分野に対応していると、会社の公式サイトにあります。岐阜県の資料では、従業員は130名と紹介されています。

注目したいのは、環境への取り組みです。岐阜県の資料によると、艶金は2019年2月に脱炭素宣言を行い、2021年9月には、国内の染色会社として初めて、脱炭素の国際的な目標認定「SBT」を取得しました。再生可能エネルギーの電力の利用、バイオマスボイラー、省エネルギー型の染色機などを進めています。

バイオマスボイラーは、1987年に燃料を転換したものだと書かれています。木材は育つときにCO2を吸収するため、燃やしても、全体としてのCO2排出をゼロに近づけられる、という考え方です。

もう一つ面白いのが、自社ブランドです。「KURAKIN(クラキン)」は、食品の残りかすや植物から取り出した色素で染めた生地を使う雑貨ブランド。「retricot(リトリコ)」は、染色工場に在庫として眠っていた生地を再利用する、アップサイクルのブランドで、生地を捨てたり燃やしたりすることによるCO2の排出を減らす効果もあると紹介されています。公式サイトには、ロボット用のカバー(塗装用、クーラント対応、耐熱対応)も掲載されています。

岐阜県の資料に載っているメッセージでは、「中小・下請けの企業でも、SDGsに取り組むことは有効だと県内に伝えたい」とされています。

編集メモ

染める会社が、染め残しや余った布を、新しい商品に変えている。仕事の「余り」を見つめる視点は、環境の話であると同時に、ものづくりの誇りの話でもあるように感じました。

4つの現場に共通すること

ここからは、資料を読んで編集側が感じたことです。現場の方がどう感じているかは、お会いして伺わないと分かりません。

一つめは、地域の土や資源を生かしていること。常滑焼は鉄分の多い土を、萬古焼は紫泥を、それぞれの産地の個性にしています。

二つめは、変わることを恐れていないこと。萬古焼は急須から土鍋へ、鈴研陶業はタイルからアクセサリーへ、艶金は染色から環境やアップサイクルへと、軸を残しながら広がっています。

三つめは、続けてきた時間の長さです。平安から続く産地、270年以上の歴史、昭和の創業、明治の創業。時間の長さが、そのまま信頼になっているように見えます。

このあと、お話を伺いたい人たち

東海ストーリーズは、「ちゃんと話を聞いて、その人自身の言葉で記録を残す」ことを大切にしているサイトです。今回は公開資料をもとにしたまとめですが、いずれは、こうした現場の職人さんや経営者の方々にお会いして、言葉を直接記録していきたいと考えています。

資料の情報は、各資料に記載された時点のものです。最新の状況は、各団体・各社の公式の発信をご確認ください。掲載内容に誤りがあった場合や、修正のご希望がある場合は、お問い合わせからご連絡ください。速やかに対応します。

出典

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