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福祉 / 公開情報まとめ

東海3県の就労継続支援と工賃|平均額を読む前に確かめたいこと

発行者:増田裕一 / 東海ストーリーズ

公開日:

この記事は、国や自治体などが公開している資料をもとにしたまとめです。取材記事ではありません。数字や出来事は、各資料に書かれている範囲で紹介しています。資料の情報は、各資料に記載された時点のものです。誤りに気づかれた場合は、お問い合わせからご連絡ください。

障害のある人の働く場を調べると、「平均工賃月額」という数字に出会います。生活に関わる大切な情報ですが、その金額だけで、通う人の働き方や事業所の支援まで分かるわけではありません。県平均と一人ひとりの受取額も、同じものではありません。

今回は厚生労働省と東海の自治体の公開資料をもとに、就労継続支援の工賃を読む際の入口を整理します。主に取り上げるのは、2024年度の実績です。確認日は2026年10月24日で、現在の個別事業所の支払額を調べた記事ではありません。

僕がこの記事で考えたいのは、数字を順位にすることより、その先にある仕事や支援をどう確かめるかです。公表されている事実と、そこから考えた解釈を分けて書きます。利用者や職員への取材、僕自身の事業の実績紹介は行っていません。

最初に、A型とB型の数字を分ける

愛知県の工賃実績の解説では、就労継続支援は、企業等に雇用されることが困難な人に働く機会や訓練を提供する事業と説明されています。原則として雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型があり、A型には非雇用型の支援形態もあるとしています。

同県は、A型の雇用型には最低賃金が適用されることも明記しています。したがって、A型の平均賃金とB型の平均工賃を並べて、その差だけで支援の良し悪しを決めることはできません。制度や契約の違いを確認する必要があります。

厚生労働省の2024年度資料が集計する工賃・賃金には、給与、手当、賞与なども含まれます。呼び名だけでなく、何を含む数字なのかが大切です。また、月額をそのまま時給とみなすことはできません。時間に関する別の情報が必要です。

ここからは解釈です。僕なら、説明を受けるときに「月にいくらですか」だけで終わらせず、「どのような利用の仕方を想定した額ですか」と尋ねたいと思います。同じ月額でも、本人の通える日数や、取り組む仕事との関係を知らなければ、生活の見通しには結びつけにくいからです。

同じ国の資料で見る、東海3県の2024年度

厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」の別紙3には、B型の県別平均工賃月額が載っています。同じ資料・同じ年度の数字として、愛知県27,069円、岐阜県23,758円、三重県24,330円、全国平均24,141円と確認できます。

これらは県単位の集計値です。県内のすべての利用者がこの金額を受け取った、という意味ではありません。どの作業に取り組み、どれだけ利用し、どのように分配されたかという個別の事情を、表だけから知ることはできません。

愛知県の公表ページでは、2024年度のB型平均工賃月額を小数点付きの27,068.5円で掲載しています。一方、国の県別表は円単位です。同じ年度でも表示の細かさが異なるので、別々の資料の数値を混ぜる場合には、表示単位をそろえる必要があります。

ここからは解釈です。愛知の額が他の2県より高いという表の読み取りと、愛知のすべての支援が優れているという判断は別です。数字の違いを見つけたら、仕事の種類や地域の取引環境、利用の状況など、何が関係しているかを調べる出発点にするほうが、現場を理解する助けになると思います。

平均より高い事業所にも、低い事業所にも、表に表れない支援があります。それを理由に工賃の課題を軽く扱うのではなく、金額の改善と本人に合う働く機会の両方を問い続けたいところです。県平均から個別の状況を推測して埋めることは避けます。

昔の数字と比べるときは、計算方法も見る

国の資料には、B型の平均工賃月額に関する算定方式の変更が注記されています。対象となる報酬体系では、従来の工賃支払対象者数を用いる方式から、一日当たりの平均利用者数を用いる方式へ変更され、2023年度実績から新方式が反映されています。

そのため、2022年度と2023年度の平均額の差を、利用者一人ひとりの受取額が同じ割合で増えた証拠にすることはできません。計算の前提が変わった部分を含むからです。今回は長期の増減率を計算して、成果として紹介することはしていません。

さらに、国の資料は2026年3月に過年度数値を一部修正しています。たとえばB型の2023年度全国平均は、23,053円から22,649円へ修正されています。以前の記事や保存資料で異なる数字を見かけたら、どの版なのかを確かめたいところです。

ここからは解釈です。数字の説明では、目立つ金額のすぐ近くに、年度と集計の前提を置くことが親切だと思います。読む人が脚注にたどり着かなければ分からない書き方より、「これは2024年度の県平均です」と本文で伝える。そのひと言が、誤解を減らす助けになります。

同じ事業所の変化を調べる場合も、金額だけでなく、利用人数や作業内容の変更、計算方法の変更があったかを確認する余地があります。上がった理由も下がった理由も、先に決めつけない。経年変化を扱うときほど、その姿勢を大切にしたいと思います。

計画の目標額と、支払い済みの実績は違う

愛知県は2024年度から2026年度を期間とする第5期工賃向上計画を公表しています。また、県の案内では、報酬算定区分や加算の有無を問わず、すべてのB型事業所が事業所の工賃向上計画を作成し、提出することになっています。

三重県も2024年度から2026年度の工賃向上計画を公表しています。計画は、これから目指す方向を確認するための資料です。そこに記載された目標と、実際に支払われた工賃の報告は区別して読む必要があります。目標額を達成済みの額として扱うことはできません。

岐阜県の2023年度実績公表ページでは、県平均とともに、事業所ごとの資料への入口も用意されています。ただし、それは2023年度のページです。本記事の2024年度県別比較には、先ほどの国の統一資料を使っています。新旧の年度を一つの表で混ぜないためです。

ここからは解釈です。計画を読むなら、金額の目標だけでなく、仕事をどのように確保するか、作業の質や納期をどう支えるか、誰が進み具合を確かめるかを聞きたいと思います。目標を掲げることと、日々の仕組みに落とし込むことの間には、いくつもの判断があるはずです。

ただし、公開計画に詳しく書かれていないからといって、何も取り組んでいないとはいえません。確認できない点は、質問として残しておく。資料の余白を、批判や美談で埋めないようにしたいと思います。

見学や相談では、平均額の次に何を聞くか

ここからは解釈です。もし利用を検討する人と情報を整理するなら、僕は、本人がどんな仕事に関心があり、どのくらいのペースで通いたいかを、数字と並べて考えます。これは特定の事業所を選ぶための評価表ではなく、相談時の質問をつくる一般的な視点です。

たとえば細かな手作業が得意な人でも、長時間同じ姿勢を続けることは負担かもしれません。反対に、短い時間から慣れていきたい人もいるでしょう。これは仮定の例です。診断名や障害の種類だけで、作業への向き不向きを決める意図はありません。

説明を受けた後に、どこまで理解できたかを確かめる時間も必要だと思います。金額が示されても、欠席した月や新しい作業を始めた月にどう扱われるかは、別の質問になります。分からないことをその場で全部解決できなければ、持ち帰って次の相談に使える形で残す方法もあります。

工賃の向上を考える事業所の側でも、売上だけでなく、その仕事に必要な材料や外注などの費用、作業に伴う負担を把握することが論点になります。ここで収支や分配の具体的な方法を提案しているわけではありません。現場の説明を聞くための問いとして挙げています。

取引先が増えたときに、仕事の量に合わせて職員の確認や利用者への説明も増えるのか。反復しやすい工程と、一人の経験に頼る工程はどこか。こうした話を聞くと、工賃の数字がどのような日常に支えられているかを考えやすくなります。今回はそこまでの取材はできていません。

個人の受取額と、事業所の平均を分けて記録する

ここからは解釈です。工賃の説明を受けたら、それが本人に支払われる額なのか、事業所全体の平均なのかを、メモの見出しから分けておくとよいと思います。数字だけを書き写すと、後からどちらの話だったか分からなくなることがあるためです。

たとえば見学時に平均額を聞き、その後に本人の利用予定が決まった場合、同じ額をそのまま収入の見込みに使わず、予定する利用の仕方でどう説明されるかを確認する必要があります。これは仮定の場面で、特定の事業所の支払方法を説明したものではありません。

また、比較用のメモには、公表年度、資料名、確認日も一緒に残したいところです。新しい報告が出たとき、どこが変わったかを確認しやすくなります。金額だけを保存するより、本人や家族、支援者が同じ前提で話すための材料になります。

金額を大切にしながら、働く姿を数字だけにしない

ここからは解釈です。工賃は暮らしに関わるので、低くても気にしなくてよいという話にはしたくありません。一方で、県平均の比較だけで、その人に必要な支援や通う意味を決めることも避けたいと思います。両方を同時に見るために、資料の読み方が必要になります。

農業と福祉のつながりについては、既存記事の東海の農福連携でも公開資料を整理しています。ただし、そこで紹介する各団体の数字も資料時点の情報です。今回の県平均と並べて、現在の優劣を付けるための資料ではありません。

まずは、気になる数字に年度と出典が添えられているかを見る。その次に、どんな仕事を、どんな支援とともに行っているかを聞く。平均額から始まった関心を、一人ひとりが働く現場へつなげていけたらと思います。

仕事づくりや支援の工夫について、取材のご相談はこちらからお寄せください。実績や体験を推測で補うことなく、確認した資料と現場の言葉を分けて記録していきます。

出典

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